ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 39】 危険なお誘い

ルークをザハンに連れ帰り恋人と会わせて、ザハンへ来た目的の1つは果たした。

あとはドン・モハメの家で預かった「あるもの」を教会へ持って行くだけだ。

 

再会を果たしたルークと恋人のサマンサが手を取り合って見つめ合うのを横目に

おれはレオンに目配せをしてその場を離れ【聖域への門】へ向かおうとした。

 

「あらあら、ちょっと待って!」

おれたちが立ち去ろうとするのに気づいて、カルラがあとを追ってきた。

 

「みんなを助けてくれたお礼と、ルークを連れて来てくれたお礼もしなくちゃ。

 たいしたおもてなしも出来ないけど、どうぞ今晩はうちに来てくださいな。

 ルークが無事に戻って来たお祝いも兼ねて、パーティーをしましょう!」

 

「そうだよ。おにいちゃん、おじちゃん。今夜はうちに遊びに来てよ!」

リックとぶち犬が母親の後について来て、おれの腕をつかんで引きとめる。

 

せっかくの誘いを断るのも悪い。おれたちは夜にカルラの家へ行くと約束した。

 

 

【聖域への門】に入ると、大聖堂の正面に座る美しい巫女さんが迎えてくれた。

漁師町で日焼けした明るく活発な女たちが多い中、教会の正面に座る巫女は

透き通るような滑らかな肌をしていて、たたずまいも凛とした雰囲気があった。

 

「巫女さん。以前に借りていた、この町の宝を返しに来たんだ」

 

おれが『聖なる織機』を取り出すと、巫女は目を輝かせて穏やかに微笑んだ。

「まあ、なんと律儀なお方なのでしょう。どうもありがとうございます」

 

ザハンに来た2つ目の目的はこれだ。『聖なる織機』を教会に返すこと。

 

海底洞窟で再会した後、離れていた間にどんなことがあったのかを語り合う中で

王子からこんな話を聞いていた。

 

おれと別れた後、王子がナナやサイラスと一緒に『満月の塔』へ行ったとき

塔の中に置かれた宝箱を開けると『聖なる織機』が入っていたのだと。

 

ドン・モハメに渡した『聖なる織機』はザハンの神殿に祀られていた宝物だった。

ザハンに返したかったが、ドン・モハメから取り上げるのも悪いと思っていた。

 

塔の宝箱からも見つけて2つあるのなら、1つはザハンに返してやることが出来る。

レオンに会いにテパの村へ行くと決めたおれは、王子から『聖なる織機』を預かり

テパの村に到着した日の夕方に、ドン・モハメの家を訪ねていた。

そして、ザハンから借りていた織機と持参した織機を交換してもらっておいたのだ。

 

おれは巫女に『聖なる織機』を手渡し、巫女が元の場所に供えるのを見つめていた。

上品で優美な動きに魅せられたのか、レオンも呆けたような顔で巫女を見ていた。

 

 

「人を探しているのか?」

 

突然、背後から声がしておれとレオンは「うわぁ!」と飛びあがった。

こわごわ振り向くと、おれに『トラマナ』の呪文を教えた婆さんが立っていた。

 

「なんだ、婆さん! 驚かすなよ」

 

「なにを言っておる、さっきからずっとおったわい。おぬしらが鼻の下を伸ばして

 ヘラヘラとにやけながら、おなごに見とれておっただけじゃろうが」

 

「うっせえな、にやけてなんかねえよ。で、いったいなんの用だよ。婆さん」

 

「人を探しておるのじゃろと言ったんだ。そいつはどこにいるかわからん男か?」

 

なにも言ってねえのに心を読まれたか。相変わらずあなどれねえババアだぜ。

 

「探している男の情報、教えてやってもよい。おぬし、今晩わしの部屋に来い」

 

「婆さん、あいにくだったな。今夜はすでに先約があるんだ。婆さんは今夜も

 1人寂しくおねんねするこったな」

 

「ふん。先約って言ったって、どうせみんなで集まって飲み食いするだけじゃろ。

 終わってから来てもいいんじゃぞ」

 

「............」

 

...... どうする? 正直なところ、ガルダーの情報は喉から手が出るほど欲しい。

ペルポイの情報屋に「売り物としてはペルポイの町が世界一の品揃え」と聞いた。

同じ情報を聞いたなら、町を訪ね歩いてもガルダーには会えないんじゃないか?

 

町以外では「ロンダルキアの洞窟に『稲妻の剣』がある」という情報は得たが

洞窟へ向かうためのほこらは、アルファズルが魔法で厳重に封鎖したはずだ。

では、ガルダーは今どこへ?

 

「どうした? なにを迷っておる。おぬし、情報が欲しいのじゃろ? 」

 

「...............」

 

迷いはあったが、おれは結論を出した。 

「... 悪いな、婆さん。やっぱり行かねえや。おれは前に来たときよりはるかに

 成長したからよ。婆さんに頼らなくても、今のおれなら自力で解決できるさ」

 

老婆は鋭い眼光でおれの顔をじっと見つめると、脱力して「ふっ」と笑った。

「確かにな。おぬし、成長したようじゃの。しょうがない、今回は諦めてやる。

 だが、またなにか困ったことがあれば、いつでもわしの部屋に来るがいい」

 

「ああ。ありがとよ」

 

レオンは口を半開きにしたまま、ポカンとした顔でおれと婆さんを交互に見ていた。

おれは、マヌケな顔でボーっと突っ立っているレオンの肩を叩いて教会を出た。

レオンはハッと我に返り、婆さんを警戒しながらおれの後についてきた。

 

 

教会を出てカルラの家に行くと、漁師たちがすでに集まっていて大騒ぎだった。

おれとレオンは「勇者様のご登場だ!」と上席に案内され、しこたま飲まされた。

楽しい宴は夜遅くまで続いた。

 

その夜はカルラの家に泊めてもらい、翌朝カルラとリックに礼を言って家を出た。

 

 

外に出ると、よく晴れていて穏やかな海が朝日を受けてキラキラと輝いていた。

海岸には寄り添って座る2人の人影が見える。あれは、ルークとサマンサだ。

2人は見つめあい、微笑みあいながら、楽しげに語り合っていた。

 

ここでサマンサと穏やかな日々をすごすうちに、ルークの記憶も戻るだろう。

たとえ記憶が戻らなくても、この2人なら幸せに暮らしていけるに違いない。

 

「こんな風に小さな町で愛する人と穏やかに暮らすってのもいいかもしれないな」

朝日を受けて語り合う若い恋人同士を眺めながら、レオンがポツリと言った。

 

「へっ。そう思うんだったら、あんたはテパに帰らずこの町に残ったらどうだ?

 ここの女たちはみんな働き者だからよ、イイ女を見つけて住み着いちまえよ」

 

「おれはラゴスをつかまえた英雄だぞ。女に食わしてもらうような男じゃねえよ。

 そんなことより、あんたこそ、さっさと姫様とくっついちまえよな!

 

「なにっ?!」

 

「ははは。気づいてないとでも思ったのか? あんたの気持ちはもうバレバレだぜ。

 確かに最初は気づかなかったけど、姫様の誕生パーティーでハッキリわかったな。

 姫様のために、わざわざ海岸で綺麗な貝殻を拾い集めてプレゼントするなんてよ。

 口が悪くて生意気だけど可愛いところあるじゃねえかって船長とも話したんだよ。

 オルム船長も言ってたぜ、あんたのけなげで一途な想いが報われるといいなって。

 百戦錬磨のおれから、女の落とし方を教えてやろうか。なんせ女ってのはよ...」

 

「...... まだしゃべり続ける気か? てめえ、ホントにここに置き去りにするぞ!」

おれはレオンを一喝すると、くるりと背を向けて早足で歩き始めた。

 

「お、おいっ。待てよ! 冗談だよ、冗談。悪かったよ。なあ、もう言わねえから

 おれも連れて帰ってくれよ~」

レオンは後ろからあわてて追いかけてくると、おれの腕にしがみついてきた。

 

「わかった。わかったから離れろよ。男にしがみつかれるなんて気色悪い!」

 

「... あ、ああ」

おれの言葉にレオンは少しだけ離れたものの、置いてかれるのがよっぽど怖いのか

まだ手を伸ばしておれの服の裾をギュッとつかんでいた。

 

 

ったく! どいつもこいつも、おれのことバカにしやがって!

 

 

 

ザハンといえば、やっぱりこの「婆さん」は外せませんよね ( *´艸`)

 

前回は『トラマナ』の呪文と引き換えに、一夜のお誘いを受け入れたカイン。

今回は『ガルダーの情報』をエサに再び誘われました(やるな、婆さん (;´∀`))

 

カイン、危うし! でしたが、今回は何とか逃れることが出来ましたよヾ(*´∀`*)ノ

 

そして、レオンとオルム船長はカインの恋心に気づいていましたね (≧▽≦)

そりゃあ、女の子の誕生日にわざわざ綺麗な貝殻を拾い集めてプレゼントしてたら

大概の人は「おっ? これは...♡ 」って気づいちゃいますよね~ ( *´艸`)

(もう一人のプレゼントは『ロトの印のステッカー』だから、なおさらね (;´∀`))

 

 

ザハンの用事はこれにて終了~♪

思春期カインを怒らせたレオンは、テパの村へ連れて帰ってもらえるでしょうか?

そして、次なる目的地は?

 

続きもお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ