ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 38】 恋人たち

かつて牢屋の鍵を密売していた男に金を払ってガルダーに関する情報を求めたが

ガルダーが次にどこへ向かったかを知ることは出来なかった。

 

店を出たおれたちは、地下を歩いた。

地上も綺麗に整地されて変わっていたが、地下の様子も大きく様変わりしていた。

 

アンナが歌っていた広場は歌以外にも、さまざまなショーがおこなわれるようだ。

今は胸元と腰に布を巻きつけただけの女が踊っていて、観衆がはやし立てている。

 

地下には酒場や宿屋などの盛り場が残り、武器屋や道具屋などは地上へと移転して

かつて道具屋などがあったところでは、数人が狭い場所で小さな店を営んでいた。

 

「あいつ」の店があった場所には、占い師だろうか? 長いローブを身にまとった

美しい女が水晶玉を前にして座っていた。

 

「あいつ」の店がなくなってる!

 

くそっ! 店を訪ねればすぐに会えるだろうと思っていたが甘かったか。

このままガルダーだけじゃなく「あいつ」とも会えないなんてことねえよな。

 

 

店をたたんでいる以上、まだこの町にいたとしても地下にいる可能性は低い。

おれはレオンと一緒に地上へと戻った。

 

「あいつ」が向かう先はハッキリしているが、何のツテもなく行くのは大変だ。

行く方法が見つからず、まだこの町に留まっていてくれるといいんだが。

 

地上に戻って、道具屋をまわってみたが「あいつ」の顔は見えなかった。

 

きょろきょろとあたりを見回していると、海岸近くに男が立っているのが見えた。

地下暮らしが続き色白な奴らが多い中で、めずらしく褐色に日焼けした顔...。

 

いた! あいつだ

 

おれはレオンを引っ張り海岸へと走った。

 

その男『ルーク』はおれたちを見て驚いた顔を見せた後、深々と一礼した。

「あなた方のことは覚えています。私がザハンの漁師だと教えてくれた方ですよね」

 

ルークの顔を見たレオンは、おれの顔を見て笑顔で大きくうなずいた。 

「おれにも関係があるってルークのことか! 確かに、おれが言ったんだもんな。

 ルークはザハンの漁師だって」

 

「あなた方の話を聞いて自分がザハンの漁師だと知ってから、ザハン行きたいと

 願っていました。今は平和になって、人々が自由に往来できるようになったので

 この機会に私も故郷のザハンへ帰ろうと店をたたんで出て来たんですが...」

ルークは海岸線に停泊している船を見ると、うつむき小さくため息をついた。

 

ペルポイから出ている船は遠くまで行っても、せいぜいデルコンダル止まりだ。

人里離れた辺境の漁村・ザハンにまで行く船など、皆無に等しかった。

 

「レオン! やっぱりおれたちが来て正解だったな! ルークの身元がわかったとき、

 王子が『平和になったらぼくたちがザハンに連れて行く』って約束してただろ?

 あいつはそんな約束すっかり忘れちまってるだろうし、仮に覚えていたとしても

 今は王様になる準備で忙しくてそれどころじゃねえだろ。だからよ、おれたちで

 ルークをザハンに連れて行ってやろうと思ってよ。それであんたを誘ったんだ」

 

「えっ! 私をザハンに連れて行ってくださるのですか? それはありがたい!」

 

「ああ。約束だからな。じゃあ、行くぜ」

 

 

 

虹色の光が薄れていくにつれて、波の音と潮の香りが漂ってきた。

前に来たときはザハンの町は女と子供ばかりだったが、今は男たちの姿も見える。

 

「ルーク!?  おまえ、ルークじゃねえか? おお! おまえ、生きてたのか!」

海岸で漁網の修理をしていた男が、町の入口に立つおれたちを見て駆け寄って来る。

 

男の声を聞いた他の奴らも「ルークだ!」「ルークが帰って来たぞ!」と言って

あちこちからぞろぞろと集まって来た。

 

ルークは人だかりを前に、おろおろとおびえた表情を浮かべておれたちを見てきた。

 

しょうがねえな。おれは困惑しているルークの代わりに状況を説明してやった。

 

ルークは海に落ち漂流していたところを助けられ、ペルポイの地下街にいたこと

ルークは自分の名前以外の記憶をなくし、ペルポイで店を出し情報収集してたこと

おれとレオンはペルポイに行く前にザハンに来ており、そのとき立ち寄った酒場で

レオンがルークの名前を聞いていて、ルークがザハンの出身だとわかったこと

平和になったらルークをザハンに連れて行くと約束していたので、連れて来たこと

 

「あんたたちは? 以前この町に来たときはいなかったが、ルークのお仲間なのか?」

おれの問いかけに、最初にルークの姿を見つけた男が答えてくれた。

 

「おれらはタシスン船長のもとで海に出ていた漁師なんだ。あるとき、嵐にあって

 仲間のルークが海に落ちてしまってな。懸命に探したけど、見つからなかった。

 それでザハンに戻ろうとしていたところ、海賊バールの一味に襲われたんだ。

 海賊バールはおれたちをかばってくれた船長を殺し、おれたちは奴隷にされた。

 このまま一生奴隷かと諦めてたとき、勇者様が現れてバールを倒してくれたんだ。

 それでおれたちも解放されて、なんとかこの町に帰って来ることが出来たんだよ」

 

男の話を聞いたレオンは、ニヤニヤ笑いながらおれをひじで突いてきた。

 

おれとレオンの様子を見た男が、目をぱちくりさせながら尋ねてきた。

「ま、まさか! あなたが、あのときの勇者様なんですか?」

 

「それだけじゃねえぜ。こいつはあのハーゴンも倒しちまった、すげえお方なのさ」

 

「ええーーーっ!」

 

男たちはその場で一斉にひざまずいた。

 

「海賊バールを倒してくれただけでもすごいことなのに、あのハーゴンまでも倒して

 さらにルークを連れて帰って来てくれるとは! あなたこそ、まことの勇者です!」

 

 「へへっ、ちょっと褒めすぎだぜ。まあ、おれたちにとってはバールもハーゴン

 弱すぎてちょろいもんだったけどよ」

 

「おおーーっ!」集まった民衆が尊敬のまなざしでおれを見つめている。

 

レオンはおれの言葉を聞くと、下を向いて吹き出しそうになるのをこらえている。

けっ、失礼な奴だぜ。

 

 

「ルークおにいちゃん!」

背後から声がして、タシスンの息子リックがぶち犬と一緒に走って来た。

 

リックたちの後ろからは、タシスンの妻カルラが若い女を連れて歩いてきていた。

女は痩せて青白い顔をしており、カルラに支えられながらゆっくり向かってくる。

 

 

「...... ル、ルーク...?」

よろけながら歩いてきた若く美しい女はルークを見つめ、か細い声でつぶやいた。

 

この女がルークの恋人か?

おれが隣にいた男に視線で問いかけると、男はうなずき説明してくれた。

 

サマンサはルークの恋人で、2人は漁から戻ったら結婚しようと誓いあっていた。

 

漁師たちが海賊バールから解放されて、命からがらザハンへと戻ってきたとき

ルークが行方不明と聞かされたサマンサは「ルークは海に落ちて死んだ」と思い

すっかり絶望して生きる気力を失った。

 

サマンサの様子を知ったカルラは、毎日泣いてばかりいるサマンサを励まし続け

ふさぎこみがちなサマンサの食事や生活面での面倒を見てきたのだという。

 

男の話を聞きながら、ルークは首を振り悲しそうに顔をゆがめていた。

 

「... ごめん... 思い出したいのに... なにも思い出せない...。... 本当にすまない...」

ルークは目に涙を浮かべ消えそうな声でつぶやくと、ガックリとうなだれた。

 

サマンサはカルラの手を離し、足元をふらつかせながらルークの前まで行くと

ルークの手を両手でつかんだ。

 

「いいのよ... ルーク。いつか思い出してくれたら... ううん、たとえ思い出せなくても

 元気でいてくれたら... それだけで充分よ。... ああ、ルーク... 生きてて良かった!

 ルーク、あたしはサマンサよ。これからもよろしくね!」

 

「... サマ... ンサ...」

ルークは顔をあげ、目を真っ赤にしながらもサマンサの手を強く握り返した。

 

カルラが目を潤ませながらルークとサマンサのそばに行き、2人の肩を叩いた。

「これから2人でまたあらたに思い出をつくっていけばいいのよ、ね?」

 

カルラの言葉に、涙を流しながら見つめ合っていた若い2人は大きくうなずいた。

 

 

 

ゲームプレイ中も、ゲームブックを読んだときも気になっていたこの恋人たち。

ペルポイにいるルークとザハンでルークの帰りを待つ恋人は再会できたのか?」

(もう1組はリムルダールの町の端と端で待ちぼうけしているカップル (;´∀`))

 

ゲームブックでは王子が「ザハンに連れて行く」と いい加減な 口約束をしてたので

王子の代わりにカインとレオンが約束を果たしてあげましたヾ(*´∀`*)ノ

 

恋人の名前は、ナナの分身( (;´∀`)?)の名前リストから「漁師町に合う名前」を

私の独断と偏見でチョイスしました。

 

「恋人と再会したらルークが記憶を取り戻す」という展開も考えたんですが

出来すぎの作り話だと思って止めました(まあ、作り話なんですけどね (;´∀`))

 

 

ルークをザハンに連れてきて、恋人との再会を果たしてあげたカイン (*´ω`*)

ザハンでは「まことの勇者」の称号を得ることが出来ましたよヾ(*´∀`*)ノ

 

 

続きもお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ