ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 25】 別れのとき

ローラの門を抜けると、意外な人物がおれたちを待っていた。

 

「遅かったの、カイン」

 

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「グランログザー師匠!? なぜここに?」

 

おれを見て穏やかに微笑む師匠の背後には、さらに2人の人影があった。

 

以前より顔色が良くなった男性と、彼を支えるほっそりとした美しい女性...

 

 

「父上っ! 母上っ!」

おれのすぐ後に出てきた王子が、走り出た勢いのまま2人のもとへ向かった。

 

 

「あっ...!」

驚いた声に振り返ると、ナナが何ともいえない複雑な表情を浮かべて立っていた。

それは王子の親父とおふくろを見て、ただ驚いたというより、なにか... もっと...

2人の姿に、もっと、とてつもなく大きなショックを受けた...... そんな風に見えた。

 

 

… なぜだ?

 

 

「ちょっとぉ~。あたしたち子供なんだから、負けてくれたっていいじゃない」

「ねえ~、みんな待ってよ~」

少し遅れて、ティアとリーナがぜえぜえ言いながら洞窟から飛び出してきた。

チビ2人のすぐ後ろから、サイラスとアルファズルが悠々と歩いて出てくる。

 

王子の親父とおふくろを見ながら血の気のない顔で立ち尽くしていたナナは

洞窟からの声にサッと表情を変えた。

 

「もう、みんなで競争だって言ったのはティアちゃんでしょ~」

ナナは楽しげに笑うと、手を広げティアをくすぐるしぐさを見せて追いかけた。

ティアとリーナは「キャー、キャー」言って笑いながらナナから逃げている。

 

 

「わが君! 王妃様! いったいどうしてこのようなところへ?」

待っていた2人に気づいて、サイラスが王子たちのもとへ駆け寄っていった。

 

 

みんなが集まったところで、グランログザー師匠が事情を説明してくれた。

 

おれたちが凱旋した翌日にサマルトリアへ向けて出発してからも、師匠はそのまま

ローレシア城に滞在し、大司教と一緒に魔法を使ってローレシア王を治療していた。

 

王子の親父は、ハーゴンを倒し王子が無事に帰ったことが最良の薬になったらしく

みるみるうちに回復して、短時間であれば外出もできるぐらいに元気になった。

 

師匠がそろそろ南のほこらへ帰ろうと、暇乞いを告げるために謁見したところ

ちょうどサイラスから「王子と共にローラの門を視察する」という通知が届いた。

 

その場に立ち会ったグランログザー師匠は、通知を受けた王子の親父とおふくろが

早く王子に会いたいと願っていることが手に取るようにわかった。

 

息子を恋しがる2人のために、師匠が魔法を使っておれたちの様子を探ったところ

今日あたりローラの門を抜けるとわかったので、大聖堂へ行き大司教の了承を得て

短時間の外出を兼ねて、親父とおふくろをここまで連れて来たのだという。

 

 

「わしが魔法を使って、みなさまを安全にローレシアまで送り届けましょう。

 それからわしは、南のほこらへ戻ります。カイン、達者でがんばるのじゃぞ」

 

見違えるほど元気になったとはいえ、まだ外出は短時間に控えた方が良いらしい。

陽が暮れて冷えてくる前に、王様は早めにローレシアへ戻った方が良いのだろう。

 

慌ただしくなったが、おれたちはここで王子と別れのあいさつを交わした。

 

 

「ローラの門の修繕では、またサマルトリア王にもお世話になると思う」

 

「ああ。遠慮なんかいらねえから、好きなときにいつでも来いよ」

 

「カインもね。ぼくで力になれることがあったら、いつでも言ってきてよ」

 

「おう、わかってる。じゃあ、またな」

 

おれと王子はガッチリ握手をかわした。

 


「王子、大変だろうけどがんばってね。あなたなら、立派な王様になれるわ」

 

「ありがとう。ナナもがんばってね。ぼくに出来ることがあったら言ってね」

 

「うん、あなたもね。なにかあったら、あたしにいつでも声かけてよね」

 

 

「おにいちゃん、また遊びましょうね!」「おにいちゃん、また遊んでね」

 

「ティア、リーナ。また会おうね! 2人ともローレシアにもまた遊びに来てよね」

 

 

「アルファズル、みんなのこと頼むよ」

 

「おまかせください、王子」

 

 

「じゃあ、みんな。ムーンペタまで気をつけて行ってね。元気で! また会おう!」

王子はおれたちに向けて大きく手を振りながら、師匠のそばへ歩いていった。

 

王子、王子の両親、サイラスが集まるとグランログザー師匠は呪文を唱えた。

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

おれたちに向かってにこやかに手を振る5人を虹色の光が包んだ。

次の瞬間、5人の姿は消えた。

 

 

当初の予定では、おれたちはムーンペタ周辺の現在の状況も見ておきたいので

洞窟を出た後もルーラは使わず、徒歩でムーンペタへ向かう計画を立てていた。

 

王子とは急な別れになったが、だからといって予定を変更するほどでもない。 

ローラの門前で王子たちと別れたおれたちは、今日はここで野営することにした。

 

 

 

... その夜、ふと目を開けると、テントの隙間から月明かりがもれてるのが見えた。

 

おれたちは男手が減ったため全員で協力してテントを設置し、簡単な食事を済ませ

男女別にテントに入り休んでいた。

 

昨日までは王子とサイラスがいて、男4人の雑魚寝で狭苦しかったテントも

アルファズルと2人だけになると、妙に広く寒々しく感じられた。

 

テントの端で、アルファズルが身体を丸めて寝ているのがぼんやりと見えた。

おれはアルファズルを起こさないように注意しながら、静かにテントを出た。

 

さっきから妙な胸騒ぎがしている。

目を覚ましたのも、脳裏に青白い顔で立ち尽くすナナの姿がよみがえったからだ。

起きてからずっと、胸の中をザワザワと言いようのない不安が渦巻いていた。

 

嫌な感覚が単なる取り越し苦労だと確かめるため、おれは丸テントの前に立った。

 

そうだ、きっとおれの思い過ごしだ。

たぶんおれがテントを開けたら、ナナが目を覚まして大声をあげるだろう。

そして、おれは「のぞきなんて最低!」だの「おにいちゃんのエッチ!」だの

3人から詰め寄られて、ギャーギャーと口うるさく罵倒されるに違いない。

ナナに引っ叩かれて、頬には久しぶりにモミジの跡が出来るかもしれねえ。

 

きっとそうだ。そうであってくれ!

おれは心の中で強く祈りながら、覚悟を決めて勢いよく丸テントを開けた。

 

 

いつもならナナを真ん中にして、ティアとリーナがナナにくっついて寝ている。

今日も、ティアとリーナは両端で幸せそうな顔でぐっすりと眠っていた。

 

だが...... 真ん中にナナの姿はなかった。

 

 

洞窟を抜けると、グランログザー師匠と王子の両親が待っていました~ (*´ω`*)

 

元気になったパパとママが王子を迎えに来て、再会を喜びあうローレシア御一行。

とてつもなくおそろしいものを見たような表情で王子の両親を見つめるナナ (´;ω;`)

 

みんな笑顔で明るく軽いノリで「元気でね! またね!」と王子と別れたものの

ナナが一瞬だけ見せた暗い表情が気になって、ずっと心がざわざわしているカイン。

 

罵られ引っ叩かれる覚悟で様子を見に行きますが、そこにナナの姿は... (@_@;)

 


姿を消したナナはいったいどこへ...?

ナナが暗い表情を見せる理由を、カインは(今度こそ)わかってあげられるのか?

 

ナナが落ち込む場面を初めて見てから、長らくダラダラと引っ張ってきましたが 

物語はひとつの山場を迎えますよ (*´ω`*)


続きもお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ